国宝
名刀レスポンシブ1
国宝(こくほう)
国宝とは、「文化財保護法」(1950年(昭和25年)8月29日施行)により指定された重要文化財である”有形文化財”のうち、たぐいない国民の宝たるものであるとして国が指定したものをいう。
第二十七条 文部科学大臣は、有形文化財のうち重要なものを重要文化財に指定することができる。
2 文部科学大臣は、重要文化財のうち世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるものを国宝に指定することができる。
(文化財保護法)
概要
所有
現在国宝は、2007年4月に独立行政法人国立博物館と独立行政法人文化財研究所が統合して設置された「独立行政法人国立文化財機構」で管理され、所蔵物については同機構HPe國寶にて確認できる。
国宝などを多く所蔵する東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館の4博物館は、同機構が設置するものである。名物刀剣の国宝重要文化財は、15口が東博、2口を京博が所蔵する。
民間では、徳川美術館とふくやま美術館が7口、前田育徳会が3口、三井美術館、佐野美術館、福岡美術館、刀剣博物館、永青文庫が各2口となっている。
なお国宝および重要文化財については、文化庁のデータベース、および文化遺産オンラインでも閲覧することができる。
旧国宝・新国宝
国宝といわれるものには、指定された時期により次の2種類があり、前者を旧国宝、後者を新国宝などと呼ぶ場合がある。
- [旧国宝]明治30年(1897年)制定の「古社寺保存法」および昭和4年(1929年)制定の「国宝保存法」により指定されたもの。
- [新国宝]昭和25年(1950年)5月30日制定の現行法「文化財保護法」により指定を受けたもの
古社寺保存法及び国宝保存法により指定を受けた国宝(旧国宝)はすべて、1950年の文化財保護法制定の際に一度国宝指定が解除され、重要文化財として再指定(格下げではない)を受けた。その上で、国宝として認められた重要文化財をあらためて国宝(新国宝)として認定している。
なお新国宝に指定されなかった重要文化財指定品については、その指定日は旧国宝指定日となっている。
国宝と重要文化財における名物
「国宝・重要文化財(美術品)」に分類される刀剣類で、名物や号のある刀剣は60あまりある。
うち、太刀は14、刀は19、短刀は26、薙刀直し刀が1(骨喰藤四郎)となっており、短刀が約半数を占める。指定分類では、国宝は33、重要文化財は27となっており、また製作年代内訳は平安時代が4、鎌倉時代が46、南北朝が10となっている。※2014年末時点の文化庁データベースより独自集計したもの。
| 分類 | 指定区分 | 製作年代 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 国宝 | 重文 | 平安 | 鎌倉 | 南北朝 | |
| 太刀 | 12 | 2 | 4 | 7 | 3 |
| 刀 | 8 | 11 | 0 | 12 | 7 |
| 短刀 | 13 | 13 | 0 | 26 | 0 |
| 薙刀直し刀 | 1 | 1 | |||
| 計 | 33 | 27 | 4 | 46 | 10 |
刀工別では、正宗が12、貞宗が10、吉光と郷義弘(江)が4、一文字3、兼光2、長光2、来国光2、左2、貞次2、以下国俊、光忠、貞吉、包平、景光、宗近、光世、安綱、国重、三原が各1となっている。江戸期以降に定着した三作を押しのけて貞宗が非常に多いのが目立つ。
平安時代のものでは、天下五剣から「童子切安綱」、「大典太光世」、「三日月宗近」の3口と、日本刀の最高傑作ともいわれる「大包平」が入っている。
国宝にまつわる小話
刀身の指定は明治42年から
-
当初の旧国宝指定においては、刀装に重点が置かれていたため刀身の指定はなされていなかった。明治42年(1909年)、当時内務大臣であった一木喜徳郎が刀剣部門を設けたほうが良いと提案し、その後刀身に対しても文化財指定が行われるようになった。
一木喜徳郎
一木喜徳郎は内務官僚、法学者(公法学)、政治家。帝国大学法科大学教授、貴族院議員、法制局長官(第10代)、文部大臣(第26代)、内務大臣(第33代)、帝国学士院会員、宮内大臣(第9代)、枢密院議長(第16代)などを歴任した。 -
それまで主に古社寺保存法に基づいて刀装及び刀剣が指定されていたが、その後は国宝保存会に対して大名家の名刀が出品されてくると、これまでの寺社保存の名刀とは異なってきちんと手入れされた物が出てきたために国宝指定委員会の山田準次郎も面食らったという。
本間君、名刀は霞をへだてて名月をみるような感じのものだと聞いている。ところが今度出ているものはちっとも霞をへだててないね、というんですよ。どうも、霞をへだてているようには見えないけれども、はたしてこれが本当に名刀といっていいのだろうかというような質問はまことに実直でだれでもいえることばでありませんね。この山田さんのことばによっても、古社寺保存会に提案された刀と国宝保存会に提案された刀とは、ことほどさように質が変わっていたことがわかるでしょう。
文化財保護の歴史
新国宝指定第一弾
新国宝は昭和26年(1951年)6月9日に第一弾の指定「文化財保護委員会告示第二号」が行われている。この時に指定を受けたものでは、大般若長光、童子切安綱、三日月宗近、大包平、稲葉郷、城和泉正宗(津軽正宗)、江雪左文字、会津新藤五、狐ヶ崎などがある。
| 名称 | 所有者(当時) |
|---|---|
| 大般若長光 | 国立博物館保管 |
| 太刀 銘 定利 | 国立博物館保管 |
| 兵庫鎖太刀 中身銘一 | 国立博物館保管 |
| 日光助真 | 日光東照宮 |
| 糸巻太刀 銘則宗 綱吉寄進 | 日枝神社 |
| 会津新藤五 | 青山孝吉 |
| 古今伝授の太刀 | 永青文庫 |
| 太刀 銘久国 | 松平頼庸 |
| 大包平 | 池田宣政 |
| 三日月宗近 | 渡辺誠一郎 |
| 童子切安綱 | 玉利三之助 |
| 稲葉郷 | 中島たま |
| 江雪左文字 | 長尾美術館 |
| 城和泉正宗 | 辻博治 |
| 太刀 銘真恒 徳川秀忠寄進 | 久能山東照宮 |
| 太刀 金象嵌銘光忠光徳花押 | 清田政人 |
| 金地螺鈿毛抜太刀 | 春日大社 |
| 狐ヶ崎 | 吉川重喜 |
御物は国宝(重要文化財)指定を受けない
御物、および宮内庁書陵部、三の丸尚蔵館、宮内庁京都事務所、正倉院事務所がそれぞれ管理する文化財については、慣例により文化財保護法による国宝、重文指定の対象外となっている。
しかし2018年5月に宮内庁の有識者会議が「価値を分かりやすく示すべきだ」と提言したのを受け、2021年9月に三の丸尚蔵館所蔵の5件が国宝指定された。※詳細は「三の丸尚蔵館」の項を参照
きっかけは美術品保護
昭和7年(1932年)に、吉備大臣入唐絵巻がボストン美術館に売却されたことを受け、「重要美術品等ノ保存ニ関スル法律」が制定された。これは当時の「国宝保存法」では、古美術品等が保護の対象となっていなかったためである。
その後、昭和25年の「文化財保護法」の制定により、「史蹟名勝天然紀念物保存法」(1919年制定)、「国宝保存法」(1929年制定)及び「重要美術品等ノ保存ニ関スル法律」(1933年制定)は廃止された。
国による買い取り
文化財の一部には、昭和25年(1950年)の文化財保護法により文部省の外局として設置された文化財保護委員会が、文化財保護行政の一環として国宝・重要文化財の買い取りを行ってきた。その後、昭和43年(1968年)には旧文部省の内部部局であった文化局と統合する形で文部省の外局、文化庁が設置され、機能は文化庁文化財保護部に受け継がれた。
最初の買い取りは「紙本墨画李白吟行図〈梁楷筆/〉」であった。江戸期に出雲松江藩松平家に所蔵されてきたが、戦後に繭山順吉氏が入手することになり、海外取引先との商談がまとまりつつあった頃に国が買い取ることで海外流出を未然に防ぐこととなった。のち昭和27年(1952年)には重要文化財指定され、現在は東京国立博物館に所蔵されている。
また刀剣類では昭和32年(1957年)度の「刀 無名正宗(名物 観世正宗)」が最初の買い取りとなっている。2番目が国の買上げで有名な「太刀 銘安綱(名物 童子切安綱)」である。3番目が昭和42年(1967年)度の「名物 大包平」と続く。
関連法律
文化庁所管
-
- 日本刀は美術品であり、文化庁所管となっている。
重要美術品等ノ保存ニ関スル法律
旧国宝保存法で保護の対象となっていなかった、日本の古美術品等の海外流出を防止するため制定された。昭和8年(1933年)4月1日制定。
昭和25年の「文化財保護法」の制定により廃止されたが、重要美術品認定については、重文指定を受けるか、あるいは海外輸出が許可される(重美取消)かのいずれかに該当するまでは有効とされている。
古社寺保存法
-
国立国会図書館デジタルコレクション - 官報. 1897年06月10日
- 古社寺保存法に関する件:国立国会図書館デジタルコレクション - 官報. 1897年12月15日
- 古社寺保存法細則:国立国会図書館デジタルコレクション - 官報. 1897年12月15日
-
古社寺保存法ニ依リ國[寶]ノ資格アル物件指定:※件数は刀剣類に該当するもの
- 国立国会図書館デジタルコレクション - 官報. 1897年12月28日 2件
- 国立国会図書館デジタルコレクション - 官報. 1911年04月17日 19件
- 国立国会図書館デジタルコレクション - 官報. 1912年02月08日 17件
- 国立国会図書館デジタルコレクション - 官報. 1913年04月14日 17件
- 国立国会図書館デジタルコレクション - 官報. 1915年03月26日 13件
- 国立国会図書館デジタルコレクション - 官報. 1916年05月24日 7件
- 国立国会図書館デジタルコレクション - 官報. 1917年04月05日 13件
- 国立国会図書館デジタルコレクション - 官報. 1918年04月08日 7件
- 国立国会図書館デジタルコレクション - 官報. 1921年04月30日 12件
- 国立国会図書館デジタルコレクション - 官報. 1922年04月13日 14件
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